カナパについて

カナパの歴史

カナパは、おそらく繊維の歴史の中では最古の作物です。
今でも自然の中で生育した野生のカナパを見つける事のできる、西シベリアやヒマラヤの南西部にその起源を見いだす事ができます。人類史上、最初の繊維だと言われており、既に紀元前2700年には、既に中国で広く普及されていました。
始めは繊維を作る為だけに栽培されていましたが、その後、食物や医薬品として仕様する為の、種子などの栽培も行われるようになりました。
ヨーロッパへのカナパの導入は、紀元前1500年 頃にシーア派教徒によって、カスピ海領域で栽培されたことによると言われています。
勿論イタリアにも紀元前5世紀から六世紀 頃に普及されました。



紀元前2世紀のラテン人の風刺作家Luciliusによって、紀元前270年にローマ皇帝が、軍事船のロープ類に使用する為に必要とした事が語られています。




ローマ時代以降、軍事目的の為に使用されるカナパ繊維の多くは、エミリア・ロマーニャ州で生産されました。

ボローニャでは、カナパの店で働くためのライセンスを持った全ての人が登録された“ Gargiuolai ”職業組合」が存在していました。
その組合規約には、カナパの購入、処理および販売、に関連する商売上の規則に従うよううたわれています。さらに、ワイヤ、ひも、バッグなどの製造に、最も適した糸の種類なども明示されています。この時代の自治体では、この並外れた繊維のおかげで、家庭内の仕事やその職人の仕事が発展しました。

田舎のどの家庭にも、糸を紡ぐ糸車や、はた織機を見る事が出来ました。
そして、機織り職人、ロープや縄職人はより高い報酬を受け取ることができました。

紀元前一千年程前から 前世紀の後半まで 、考古学、人類学、経済学、歴史の分野における科学文献は、最も栽培された植物カナパについて、その目的は食物ではなかったことについて同意しています。
カナパ繊維は、織物、燃料オイル、紙、 お香、そして数多くの医薬品を製造しています。

歴史上、カナパの価値と重要性は次のような特定の分野に活用されています。
航行  -   航海に必要なすべてのものはカナパから入手しました。
織物業界  -   1920年代までは、衣類、カーペット、カーテン、シーツ、タオルに使用された繊維の約80%がカナパ繊維でした。

製紙業界   -   1883年迄は、世界の製造紙の少なくとも75%は、カナパ繊維で製造されました。
照明   -  19世紀初頭までは、灯火のために、カナパ油が最も多く使用されました。

薬品   -    1842年から前世紀末までの間は、カナパからの抽出液、染料およびエリキシル剤は、殆どの病気の治療のために最も多く使用された薬でした。

食物   -   カナパの種子に含まれるタンパク質は、優れた植物性タンパク質の中でも、人体にすばやく消化されます。


イタリアでは、とりわけエミリア・ロマーニャ州で栽培されていたカナパが、強度があり精巧に仕上げられ、織物繊維としてより適切な物として扱われました。
それは約60年前頃のカナパ製品に証明されています。
春には、よく耕し肥料を施した耕地に種がまかれ、9月になって、高く生長したカナパ草の長さを整え、太い束にしながら収穫していきます。
収穫されたカナパ草の束は、水に浸して柔らかくすることから始まる、繊維になるまでの長い一連の作業にゆだねられます。そして8日間浸された後洗浄されます。
水気を切った後、カナパ草のまだ粗野な繊維の分離作業が始まります。
その後は、カナパ草がよく乾燥された後、打ち場での “打ちほぐす” 作業の始まりです。この打ちほぐして繊維を取る作業は、殆ど夜に行われていました。
再び乾燥させ、小さな束の一つ一つを絡まらさせないように手で降り動かしながら、二つ折りにします。この一連の作業を得た後の繊維は、きちんと並べられてからコーミングされ、汚れを落とされ、紡績への準備に入ります。
コーミングは、直接農夫によって行われる事もありますが、殆どは用具を持って家から家へと渡り歩く  “ カナピーノ ”  によって行われるのが通常です。

コーミングされ紡がれたカナパは、糸を巻き付ける為の手巻き棒又はペダルの紡績機を使いながらの紡糸作業に入ります。この作業はいつでも女性達の手で行われていました。


この作業は夕方に、暖炉の薪の節約をする為、暖かい 家畜小屋 のなかで行われる事が好ましいという慣例があります。紡いだ糸を巻き取った糸玉は、織り機の縦糸用の木箱の中に配置されます。紡績はクリスマスまでの時期に行われます。新しい年に入ればはた織り機での仕事に専念しなければならないためです。
はた織りの仕事に入る前のもう一つのステップとして、澄んだ色ではない紡いだ糸を漂白する作業があります。
紡ぎ糸の束は、大きな層の中に灰と交互に入れられていき、最後に最上部に再び灰を注ぎかける 漂白作業には七日間の期間を必要としました。四日目にすすぎ洗いです。
紡ぎ糸が澄んだ色になる迄、灰と共に煮ながら、七日目迄それを繰り返します。
全ての作業は終わり、カナパは織られるための準備が整いました。一般的には2月から3月にかけての期間に集中して織られます。

織り機は基本的には建具屋によって創られ、灯りの方向に配向され、堅固な床の専用の部屋に置かれます。織りはまず、定められた図案に従い、 平行に 単一な経糸の構成を必要とします。
縦糸の構成は複雑で、壁に打った二本の木のボルトに10本から20本の糸をぴんと張らせながら固定し、その張らせた長い縦糸の束を、ボルトから織り機へと運ぶ為 には数人での作業を必要としました。織り機に縦糸が張られ、熟練した織り職人の手によって、シャトルを使いながら垂直の緯糸 を、交差させながら布を形成していきます。
機織りの時期は、信仰的なものと世俗的なものにより定められていました。例えば、火曜日や金曜日、まして年間の中で定められた復活祭の前日などには機織りを始めることはありませんでした。
織られた布は シーツ、枕カバー、衣服、そして花嫁道具一式などに使用されました。

カナパは捨てる部分がありません。トウと呼ばれる屑繊維はロープに使用され、
一連の紡績の作業で水に浸して柔らかくしたカナパの内側部分はマッチの棒の部分に
使用されました。
コーミングの粗い不良品は、火の点火に使用されたり、作業靴の汚れをとる為に使用されました。もう少しましなものはマットレスの角部分の詰め物として、又は布袋やぞうきんとして使用されました。

農民の世界は収穫を中心に依存しており、様々な織物作業の繰り返しには、古来からの信仰に由来する 不可解な謎と童謡 や、いろんな物語が生まれます。良く育つ子供を今でも「紡錘のようにまっすぐ」と呼びます。
織物に関連する伝説として、もし縦糸がもつれた場合、近くにいる邪眼の罪にするのがならわしで、夜になってその悪魔がやって来て、織物の上で踊るような危険を避ける為、停止中の織り機のもつれた縦糸を、決してそのままに放置することはせず、からまった糸の上に、3滴のオイルを落とした水の入った洗面器を置き、悪魔の邪魔をしました。

そうしたカナパは、 1800年末から1900年初頭までの、 特に地主制の農民経済の活力源でした。そして全ての農民文化の伝統を引き継ぐ為の支えでした。

カナパ繊維の優れた特徴は、
  1. 綿よりも20%程早く乾燥し、夏は汗を発散し、快い爽やかさを保ちます。
  2. ところが、冬には熱を保ち、一年を通して使用出来る素晴らしい素材なのです。
  3. 麻や綿よりもはるかに丈夫で、繰り返し使用していくうちに柔らかくなっていき、心 地よい素材となって長く使用出来ます。

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